2025-11-12
線で描くということ
― 色をつけない絵の理由 ―

最近、うさぎさんを描くときに、あえて色をつけないことが増えてきました。
うさぎさんの種類、毛色や模様は本当に無限にありますよね。
以前から、絵を描いている時、色をつける段階になると
「何色にしよう」「どんな模様にしよう」と悩むことが多かったんです。
毛の模様や色の違いを丁寧に描き分けていた時期もありました。
けれど、どこまで描いても「うちの子とは少し違う」と言われてしまうことがあります。
絵を見てくださる方が、「うちの子と違う色・模様」という理由で
その絵の世界に入り込めないのではないかと感じていました。
線だけで描いたうさぎさんには、
見る人が自分のあの子を重ねられる余白があります。
白い紙の上に眠るうさぎさんを一筆で描くと、
その姿に「うちの子みたい」と感じる方もいれば、
「こんな時間を一緒に過ごしたい」と思う方もいます。
つまり、見る人が自然と絵の世界にスッと入り込める。
それが、私が色をつけない理由です。
色をつけないことで、絵の中に“想像の自由”が生まれます。
たとえば、昼寝しているうさぎさんを描いたら、
見る人がその隣に座って、一緒にまどろむような気持ちになれる。
お茶を飲んでいるうさぎさんを描いたら、
その湯気の向こうに自分も座って、小さなカップを手にしたくなるかもしれません。
そうやって、絵と人とのあいだに
“静かな共感”が生まれる瞬間が、私は好きなのです。
絵を通して、絵を見た人と楽しい気分や嬉しい気分、
優しい気分をわけあいたいと思っています。
うさぎさんの模様や種類を描き分けるのではなく、
うさぎさんが存在している「世界」を描きたい。
そして、その世界のなかに、
見る人が自分の大切な存在を重ねられるような余白を残したい。
それが、今の私の「線で描く」という理由です。
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