気配を感じる子鹿 ― テトラパック版画

テトラパックって知っていますか?
豆乳のパックの内側に、銀色のシートが貼ってある、あのタイプの紙容器です。
ずいぶん前に、テトラパックで版画をしている投稿を見かけました。
面白そう、いつかやってみたい。
ずっと心のどこかに引っかかっていました。
もうひとつ、版画で試してみたいことがありました。
いつもは四角い銅板に描いていますが、版そのものの形を変えてみたいと思っていたのです。
以前、薄いアクリル板でドライポイントを試したとき、
「これなら形を変えられるかも」と思い、ハサミを入れてみました。
けれど思ったより硬く、歪な楕円にするのがやっとでした。
それが、テトラパックならできるかもしれないと思ったのです。
ハサミを入れてみると、厚紙なのでやや硬さはあるものの、
比較的思った通りの形にすることができました。
今回は、子鹿を刷りました。
眠っていた子鹿が、物音に気づいて、ふっと顔を上げた瞬間。
その一瞬を、版に閉じ込めました。
テトラパックが破れないように、慎重にインクを詰め、
そっとプレス機に通します。
銅版は、しっかり余分なインクを拭き取ってから刷りますが、
この版は柔らかいので、あまり強く拭くことができません。
そのため、インクが全体にうっすらと残りました。
黒インクで刷ったのに、どこか銀色のようにも見える。
眠たさの残る目と、少しの緊張。
その曖昧な空気に、ぴったりの色になりました。
テトラパックの版は、銅よりも柔らかく繊細です。
線も、一枚ごとに少しずつ変わっていくでしょう。
その儚さが作品の空気にもなるのかなと感じました。
銅版なら、技法にもよりますが100枚ほど刷れます。
この版は、おそらく5枚が限界。
でもその分、フレッシュで、今この瞬間のような表情があります。
銅には銅の良さがあり、
テトラパックにはテトラパックの良さがある。
素材が変わると、表現も変わる。
その違いを、これからも楽しんでみたいと思います。
iichiで版画作品をそっと置いています。
(今回の子鹿は非売品です)
ご興味のある方は、のぞいてみてください。
https://www.iichi.com/shop/lulustore










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