
若い頃、職場の同僚に誘われて合コンに参加しました。
その場に来ていた現役のパイロットから聞いた話です。
何を話したのかほとんど覚えていないのに、
ひとつだけ、忘れられない言葉があります。
「旅客機はね、曲がるとき、2キロくらい手前から曲がり始めないと間に合わないんだよ」
え、2キロ?
そんなに前から?
軽自動車くらいしか運転したことがなかった私は、
大きな乗り物を操縦するスケールに驚きました。
旅客機は数百トンの巨体。
速度も重さも桁違いです。
思った瞬間に、キュッとは曲がれない。
だから、先を読んで、
かなり手前から動き始める。
当時は「へぇ、面白いなあ」と思っただけでした。
でも今になって、ときどきその話を思い出します。
旅客機は、現実に少し似ていると思います。
思考はドローンのようなもの。
思いついたら、すぐ方向転換できます。
けれど現実は、旅客機のように重い。
方向を決めても、景色はしばらく前のままです。
今、私が見ている景色は、
半年前の私が選んだ方向。
思考と現実には、時間差がある。
今、私が考えていることも、
半年後には、少しずつ景色として現れてくるのかな。
そう思いながら過ごしています。
もしこれを読んでいるあなたが、
現実が思うように動かなくて
もどかしく感じていても、
ちゃんと考えて、ちゃんと動いているなら、
機体はもう、2キロ手前から曲がり始めて、
いきたい方向に向かい始めているかもしれません。
ただ、まだ景色が変わっていないだけ。
そういえば、時間差といえば——
夜空の星も、
私たちが今見ている光は、ずっと前に放たれたもの。
そう考えると、
思考と現実の時間差も、少し興味深いことに思えてきませんか。

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